探る笠間プロジェクト
まだ寒さが残る3/27-3/30の四日間、私たちは茨城県笠間(かさま)市へ行ってまいりました。
春学期の留学生4名と、昨年の秋学期からの留学生が2名で計6名の学生が参加しました。
このフィールドトリップは今回で二回目で、前回は「笠間市に外国人観光客が来た際の課題抽出」をしました。
今回は「笠間市に一度来た人が再訪するには何が必要か」を探る旅です。
1日目
笠間市へは東京からおよそ二時間ほど。
しかし学生たちはもちろん笠間という場所を知らないので、まず二人グループに分かれて無事にたどり着けるか調査しました。
結果、時間通りに到着できたのは1つのグループだけ。
他のグループは電車に乗り遅れて遅くなってしまいました。
東京や大都市と違って頻繁に電車が行き来しませんから、一つ乗り逃すと30分以上待ちが当たり前です。
東京に住んでいると移動手段として主なものはやはり電車です。
しかし東京以外の大体の場所では車が基本的な移動手段ですから、そのギャップをまずは感じてもらえたと思います。
学生たちが到着した後は、笠間市役所の須藤さん、斎藤さんのご協力の元、ちょこっと笠間観光ツアーに出かけました。
事前に授業などで笠間について勉強しておきました(笠間稲荷神社や笠間焼、栗の生産地で有名であること)が、
実際に来てみると、その魅力はさらに深まりました。
今回のプログラムでは「コミュニティデザイン」を大きなテーマとして、外の視点と内の視点について学び、
実践する場としてフィールドワークを行いました。
もちろん私たちは外の視点として、笠間市にもっと人が来るようにするにはどうすればいいか、
内の視点を持つ笠間の人たちと調査しました。
そして、外の視点の内の視点ではどういったところが違うのか、またどの点では一致しているのかを探りました。
実は私自身、笠間のことはほとんど知りませんでした。
なので学生たちとほぼ同じ外の視点、しかし日本人。
留学生と私でどう視点が違っているのかも、興味がありました。
笠間に観光に来た人たちにまず見てもらいたいと紹介されたのが、笠間稲荷神社。
1300年以上の歴史があり、日本三大稲荷の一つと言われ、境内の規模も大きいです。
仲見世通りも情緒があり、冷たい雨が降っていましたが、学生たちは興奮して写真を撮っていました。
そのあと石切山というところへ行きました。
笠間はかつて採石が大きな産業となっており、今でも多くの石材店が残っています。
山道に入ると、そこかしこに石材店や石のオブジェがあり、ほかの地域では見られないような景色でした。
採石場跡はかなり開けているところで、切り立った山肌は壮大で見る者を圧倒しました。
最後に笠間クラインガルテンという場所へ行きました。
クラインガルテンというのは簡単に言うと、都市住民向けの貸農園のことです。
日本でもクラインガルテンは全国各地にありますが、笠間はその中でもトップクラスに有名です。
今回、実際利用している方にインタビューをしました。
Q.なぜここを利用しようと思いましたか?
A.都会での暮らしに疑問を感じた。自然と触れ合うことがもっと人間には必要だと思う。
Q.他の利用者も楽しんでいますか?
A.利用者同士仲が良く、たまにパーティーもして大変楽しんでいる。また、50棟のハウスを年間契約で借りるのだが、満足度が高く、そのまま延長する人が80%もいる。
Q.田舎の方が都会に比べて住みやすいですか?
A.物価という意味ではむしろ田舎の方が高いかもしれない。水道光熱費が特にかかる。地方は競争が少ないからだ。野菜も少し高い。だけど美味しいし、タダでもらえることもある。
Q.ここにきて何か感じたことはありますか?
A.本当に車社会だということ。田舎では歩く人は怪しい人。そのイメージを変えていかなければならない。
その後少し散歩をして宿泊場所へ。
あたご山スカイロッジに宿泊しました。
名前の通り山の上にあり、景色は最高です……が、雨のため星空は見えず、
外に出るのも寒いので、ぬくぬくとロッジの中で過ごしました。
2日目
今日はよりディープに笠間を知りに出かけました。
本日も笠間市役所の須藤さん、齋藤さん、笠間市地域おこし協力隊員の秋元さん、
そしてICUのサービスラーニングセンターの黒沼さんが駆けつけて笠間の栗、笠間焼について学びました。
笠間の栗を知るために、愛樹マロン様、小田喜商店様へ伺いました。
特殊な栽培方法で大きくて甘い栗を育て、栗農家のことも考えて経営している愛樹マロン様、
数ある品種の中で適した栗を適した形で加工し販売する、栗愛に満ち溢れた職人の店、小田喜商店様、
どちらも笠間の栗を活かし、地域貢献されている非常に熱い方たちでした。
授業で地域おこしにおいて”情熱”が必要なものの一つとして意見が出ていたので、それを体現する良い機会だったと思います。
笠間焼を知るために、大津晃窯様へ訪問しました。
そこで笠間焼の歴史についてや、実際に陶芸体験もしてみました。
高校の授業で陶芸をしたことがあるという留学生もいて驚きましたが、さすがに上手でした。
陶芸の先生のアドバイスもあり、私も含めなんとか形になりました!(たぶん)
一か月ほどで完成したものが送られてくるので、皆さんとっても楽しみです。
陶芸体験の後は笠間の目玉観光地である工芸の丘へ行き、
ギャラリーロードという笠間焼をはじめとした様々な芸術作品が展示、販売されている道を三々五々見て回りました。
学生たちにはギャラリーロードを歩いている観光客や住民、お店のオーナーにインタビューをしてもらい、
笠間についてどう思うかなど、調査してもらいました。
インタビューを好意的に受けてもらえるか少々不安でしたが、笠間の人たちは大変人柄がよく、
笠間のことを詳しく教えてくれたり、お菓子や果物をもらったりもしていました。
笠間の人の温かさに触れた素敵なフィールドワークでした。
夜はあたごやまスカイロッジでBBQの予定でしたが、また雨が降り出してしまい、ロッジでプチパーティー。
きっと雨男が潜んでいます。
山の上のBBQを楽しみにしていたので少々残念でしたが、笠間市役所の北野さんや地域おこし協力隊の秋元さんが奉行になっていただき、
素敵なBBQ料理をふるまってくれました。
そして夜が更け、ここからが本番です。
次の日は市長を交えたフィールドワークの発表会があります。
二日間で得た体験を活かし、笠間地域の活性化についてプレゼンしなければなりません。
それまでを振り返り、情報を共有し、プレゼンのトピックを決め、22時ごろ、ようやく発表の準備の準備ができました。
発表は明日の午後一時。
皆がベッドに入る頃、すでに明日はやってきていたのでした。
3日目
朝はいつもいい天気。
気温も暖かく、ロッジの朝食のホットドッグとコーヒーのセットが身体に馴染みます。
そんな悠長な気分でいるのは私だけですが、それにしても素晴らしい朝です。
留学生たちもこうした自然に囲まれた素敵な環境で過ごせるから、張り詰めずある程度リラックスして課題に臨めて良いのかなと思ったりします。
9時に市役所の一室で発表準備スタート。
残り3時間ほどでプレゼンテーションを用意し、スクリプトを考えなければなりません。
順調に進んでいるグループ。悩める若人。
様々に笠間を探ります。
13時になると、発表会場にはわっと人が集まりました。
市長をはじめ市役所の職員はもちろん、AET(Assistant English Teacher)の方々が多く来場し、国際色豊かな会となりました。
会場に入ると留学生たちはその人の多さに少し緊張が増した様子でした。
ミドルベリー大学日本校ディレクターの江田准教授から挨拶が始まり、いよいよ留学生たちの発表です。
トピックは大きく5つ。
1.笠間のトップ5 1位:陶芸体験 2位:自然ハイキング 3位:ギャラリーロードと美術館 4位:いなり神社 5位:栗
2.笠間の栗 なぜ栗がトップ2に入っていないか?
3.人が来るための工夫 日本語ができない人に対しての交通案内やサービスが必要など
4.笠間への行き方 数あるルートの中でどれが一番安いか、分かりやすいか
5.まだわからないこと アメリカ人が持っている栗のイメージをどう変えるべきかなど
限られた時間の中で、学生たちは真剣に取り組み、立派に発表しました。
おつかれさまです!
夜は市役所の方々御用達のお店へ伺い、美味しい和食をいただきました。
発表が終わり、学生たちもリラックスした様子で食事や歓談を楽しんでいました。
そしてついに、ロッジからは満天の星空を眺めることができました。
眼下に広がる街の光と相まって美しく、このフィールドワークの成功の祝福を受けている気分になりました。
4日目
青空が広がり、いつもの朝食。
これも今日で最後かと思うと少し寂しい。いや、かなり。
最終日はほぼ自由行動で、自由解散にしました。
パンフレットなどを見てまだ行っていない興味深い場所や、また行ってみたい場所を巡ります。
私は男子留学生らとともに早朝から愛宕(あたご)山をハイキングし、愛宕神社へ参拝しに行きました。
愛宕山は標高約300mで登りやすく、登山客もちらほら見受けられました。
留学生たちにも笑顔でおはようと挨拶を交わし、とても気持ちの良い朝でした。
笠間市は観光地ですから、素晴らしいことにレンタルサイクルがあります。
しかも電動自転車で1日500円という大変リーズナブルなお値段。
笠間は坂になっている場所が多いので電動自転車をお勧めします。
留学生たちは電動自転車は初めてだそうで恐る恐るサドルを跨ぎましたが、
ペダルを踏み始めるとまるでジェットコースターに乗っているようなはしゃぎようですっかり楽しんでいました。
学生と一緒に本日オープンの庭カフェ KULAでパシャリ。
それから各々の笠間の旅へ出かけました。
それぞれじっくり見られなかった笠間稲荷を見学したり、窯元へ行って笠間焼をお土産で買ったり、
もうすでにちょっとした再訪を楽しんでいます。
笠間のファンになるための魅力は地域に十分にあると確信した、フィールドトリップでした。
お世話になった多くの皆さま、本当にありがとうございました!